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写真家 山口雄太郎

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Dancers in the Park

木々や建物が斜陽を遮り、空の青が深まってくると公園内のあちこちで様々な音楽が流れ始めた。 二胡の音を探して歩いていた僕は面を喰らってしまう。 中華人民共和国陝西省西安市革命公園。 7年前の同じ春、柳の白い綿毛が行く当てもなく宙を舞っている公園で王老人は二胡を弾いていた。ハンチング帽を被り背筋の張った王さんはとても朗らかで優しく、綿毛よろしく当てもなく旅行をしていた僕を孫のように可愛がってくれた。 荷台に乗りなさい、と彼が漕ぐ自転車で市内観光を催してくれ、夕飯をごちそうになり、招いてもらった一人暮らしの彼の団地の部屋では僕のために筆を執り書をプレゼントしてくれた。 『西安革命公園で出会った若き友人山口くんへ「鵠志凌雲」』と力強く書かれた書は額装され、僕の実家の和室を彩っている。2017年の春に西安を訪れた際にもう一度王さんに会いたくて夕暮れの革命公園で二胡の音を探していたのであった。 しかし公園内を歩き回って聞こえてきたのは四つ打ちのダンスポップミュージックやバラード、民謡風の音楽で、ハンドキャリーに積載された、“ポータブル”と呼ぶにはいささか迫力のありすぎるスピーカーは適正音量を超えてビリビリと震えていた。その音に合わせて人々が舞う。 整列して同じ振り付けを踊っている女性だけのグループもあれば、男女混合のカップルになって手を取り合い、それぞれが思い思いに踊っているグループもあった。 「広場舞」と呼ばれるこのダンスは中国国内での健康意識の高まりと、お金が掛からずに手軽に楽しめる娯楽として中国全土で流行っているようで、都市部ではスピーカーの音量が騒音問題としてトラブルになることもあるらしい。 広場舞に来ている人々に大声を上げて王さんのことを尋ねて回るが、彼を知る人に出会うことはできず再会は叶わなかった。 春の公園でもう一度王さんの二胡を聴けなかったのは残念だったが、それでも広場舞を楽しんでいる人々を見るのはとても好きだった。 いつの間にかすっかり暗くなった夜の公園で思い思いに舞う人々の間を縫ってフラッシュを焚いた。 「わ!眩しいよ!」、「ワハハ、日本人よ、今日もまた来たのか!」、「一緒に踊る?」と中年の女性に手を取られてステップを手ほどきしてもらったけれど、たどたどしい足取りでどちらに行くでもなく、結局春の柳の綿毛の様にあっちへ行ったりこっちへ行ったりフワフワと宙を漂っているだけなのであった。
© 2025 | Yutaro Yamaguchi